感度の有無(1)・きらり

人間は皆同じで話せば分る、という考え方に、私は疑問を持っている

紛争学生、テロリスト :[B-45] }に、 「人生の春に5月は唯一度」、「人間の旬は短い」、という想いへ共感する感度が無ければ、
『ホロニャックの興奮』も、『映画「会議は踊る」の感動』も、『養老氏等の怒り』も、理解出来ない、   と書いてある。  更に、
人間には、『そのような感度のある人と、無い人とがある』
 、と佐久間氏は書いている。

その『感度の有無』という表現、に興味を感じたので、少し考えて見たい。


★暗闇の中で周囲を超音波で感知して飛び回る蝙蝠、赤外線で周囲を見て動く動物、などは、人間には見えない世界を見ている。  すると明るい所であっても、動物の見る世界と人間の見る世界とは違うだろうと思う。
人間同士でも、音感、視覚などには大層大きな個人差がある。  それと同様に、視覚・聴覚以外の感覚能力にも差があるだろう。  そうしてみると
人間も個人個人で、見えている世界が違う筈である。
何かに付け、『感度のある人と、無い人とがある』、と思うことがある。
人間は皆同じ、という考え方は疑問である。

100mを走るのに16秒掛かる人を幾ら訓練しても10秒で走るようには出来ない。
愛情を持ってチンパンジーを教育すれば、ABCを憶えさせる事位は出来るかもしれない。  しかし、シェークスピアを読ませることは無理である。 頭脳の内部が構造的に違うのだから。   それらと同様に、
『感度のない人』を幾ら訓練しても、『感度のある人』に変えることは出来ない、と思う。


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★{歴史認識(1):「A-12」}への痩せ蛙さんのコメントを引用する。
先ず、沖縄戦「ひめゆり部隊」生存者、宮部ルリさんの話(2006/7/14毎日新聞):「逃げ込んだ洞窟の暗闇の中で、ウジが人肉をむさぼる音を何日も聞いた。 食われているのは友人だった」、と、反戦の主張が紹介されている。

それに引き続いて、「05年の青山学院高等部の入試問題に、元ひめゆり学徒の証言を『退屈』とした英語感想文が使われた」、と、戦争論議はもう結構の話がある。

「沖縄戦」という一つの歴史的事実が、見る人に依って、これ程に違って見える、のである。     上記の私の理屈によって、
(元ひめゆり学徒の証言を「退屈」と感じる人)=(感度のない人)
   、に宮部さんの話を理解させることは、出来ないように思う。

★これと同様に、いろいろな事象に対して、感度に大きな個人差が存在するのは間違いない。
歴史認識(1)}に、書いてあった話で、 戦後日本に生まれ育った人物が、
「歴史認識は主観」、などと、のんびり囀っている事は不思議でない。
想像力の貧困な人には、自分の眼で見えない事は、存在しない事
なのだから。


自分の眼では見えてないが、其処に何かが在るだろう、
   と考えられる人が、『感度のある人』である。


但し、『感度のある人』も、相手が誰でも、自分と同じ世界を想像できると思って話をするのは、独善である。 貴方は見えないものも想像することができるが、人に依っては頭の中に、その様な機能は存在しないのだから。
『感度のない人』は、元ひめゆり学徒の証言、「ウジが人肉をむさぼる音を聞いた」、を耳にしても、「あの人はああ云っている」、と思うだけ。 言葉を音響として受け止めるだけで、内容の深刻さは感じないのだから、「退屈」なのだ。 
『感度のない人』には、「戦争が有ったか無かったか」が既に、主観の問題であり、現実の話ではない。  その人に、戦争中の出来事の話をするのは徒労なのである。

歴史認識(1)}を書いているピアニスト君のように説くこと、
「(戦争中に)、誰が、何時、どの様な行為をしたかという事は、客観的に一通りに決まった事実であり、主観の問題ではない。  歴史的事実をどの様に見るかには、大きな個人差が存在するが、事実はただ一つである」
 、と説いても、それは徒労である。
「暗闇の中に物体は存在する。 お前の眼では見えないけれど、蝙蝠には見えているのだ」、と説明しても、『感度のない人』、には徒労なのである。

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テレビドラマ「きらり」を見て、戦時下の生活条件、各種弾圧等を知らぬ多くの人が、[当時の状況=(歴史)]、を知る機会が出来た事を、私は嬉しく思う

私が気にしていたのは、日本の戦後教育や社会環境の関係で、歴史を学ばずに育った若い人である。
絵を描くこと、ジャズを演奏する事、すらが許されない社会、その様な時代があったことを、このドラマを見ることに依って、若い人達も感覚的に知るのだ。

同年代の知人が、自分の命は捨てて、後進のために戦争に行くのだ、と述べて出征していった姿を記憶している私としては、現代の若者がそれを知らぬのは、実に口惜しい想いがする。
戦後生まれで、自分の眼であの場面を見ていない人でも、テレビドラマを見て、私と同様にそれが分かってくれる人が増える、と思うと、このドラマが非常に嬉しい。
『感度はある』のに、歴史を学ばずに育った人に、当時の世情を見て貰う事が有意義なのだ。

勿論、『感度のない人』がドラマを見ても、何も学習しないのは、仕方がない。
昭和天皇の発言メモが議論になると、東条という人がどうしたなんて、自分には関係ない。  曽祖父の借金を自分に返せと言われても関係ない。 などの気楽を言うのは、仕方がない。
チンパンジーにシェークスピアは、土台無理なのである。


★20世紀の日本歴史を学ばずに育った人に、紹介したい句がある。
Cogito ergo sumu ブログ}昨年の記事「終戦日に想う」、に次の短歌を見た。

 あなたは勝つものとおもってゐましたかと
  老いたる妻のさびしげにいふ (土岐善麿)

若い人は、戦争は帝国陸軍とか一部指導者が起こしたもので、一般国民は責任がない、と思っているかもしれない。
実際は、社会の空気は、『風にそよぐ葦』を書いた石川達三が、「葦をなぎ倒した風」、を軍部ではなく、大衆世論だと考えていた通りであった。
 「この戦争は負ける」、などとは、親戚・友人の前でも、絶対に言う事は出来なかった。
夫婦の間でも、この戦争は負けるかもしれない、などということを話せない時代、の有ったことを知って、若い人はどう思うであろうか。


この句の存在が正に、その様な時代の存在証明なのである。
「終戦記念日に想う」に思う:[C-52]、に解説あり]
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[後註]:2006/10/7までに書いた、「人間の感度」の関係記事は以下の通りである。
★[C-127][2006/07/27]:感度の有無(1)・きらり
★[C-128][2006/07/27]:感度の有無(2)・悪党
★[C-129][2006/08/6]:感度の有無(3) 原爆関係者
★[C-130][2006/08/12]:感度の有無(4)民主主義
★[C-131][2006/08/15]: 感度の有無(5)交通警官
★[C-132][2006/08/21]: 感度の有無(6) O電鉄・バス
★[C-136][2006/10/07]:感度の有無(7)小泉内閣

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