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zoom RSS わが青春に悔あり

<<   作成日時 : 2008/05/11 22:24   >>

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黒澤明監督の名作、「わが青春に悔なし」
は1946年の作品で、原節子(当時26)の名演と共に、当時の世間の話題を攫った映画である。
映画は、戦前の京大事件から終戦に至る時期の世相の中で、京大事件の主役である教授の令嬢が純愛に生きる、ひたむきな人生の素晴らしさ、を描いたものである。


太平洋戦争終戦の翌年に作られたので、観客も皆が夫々に苦しんで生きてきた世相を未だ明確に記憶していた。
その戦時下の世相の中での、この映画主人公である育ちの良い美人令嬢の生きざまの立派さ。
観客の感動を惹き付けて当然であった。

私の周辺の仲間も、この映画を見なかった者は殆ど居なかったし、友人仲間の話題も、かなり長期間に亘って、この映画の内容と、原節子の魅力が多かった。

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

ところで、仲間の中でも、Y君は、当時この映画を見ていなかった

昨夜のテレビで、この往年の名画が放映された。
昭和一桁以前に生まれた人達は、それこそ夫々の青春の思い出を胸に、昨夜の放映を見たことであろう。
Y君の細君も昼から楽しみにして居て、これを見た。

Y君自身は夕食後の一休みを終え、毎日お決まりの就寝時間になったので寝巻きに着替えながら、細君の付けたテレビ画面を見るともなしに見ていた。
そして、この映画の背景が、戦前の有名な京大事件であったことを、初めて知った。
 そこで、彼は、「アッ」と言ったのであった

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

実は前にも何度か書いたことがあるが、我々の仲間は総じてドジである。 
特に、Y君は、

仲間の出合った人達:(2) 野間口光雄: [C-124][2006/07/7]

に書いたような大失態をやった前歴がある。
今回の話も、あの野間口氏の一件と相似た話である。
 その説明をする。

    ★ ★ ★ ★ ★ 

地球温暖化の話題は、近頃では漸く社会的に市民権を得て、マスコミも正面から取り上げるようになったが、30年程前には、そうではなかった。
昨日の佐久間ブログの記事:
   地球温暖化問題と日本:[B-79]:(2008/5/10)
を見て頂けば分かるとおりである。

実は、Y君はこの分野で多少の仕事をして居て、ある時にそのことをマスコミで大分派手に、報道されたことがあった。
それを見た日本全国の多くの人が、彼の研究を援助するという申し出をしてきた。
それらの多くは善意の民間人であって、損得勘定ではなく、純粋に人類の未来の為に個人的資産を寄贈するから研究に役だててくれ、というものであった。
一介の大学教授に過ぎない彼に取っては呆れ返るほどの多額の資産を寄贈するとの申し出が何件かあって、我々もその話をY君に聞いて、世の中にはその様な人達が居るのかと、驚いたのであった。

その善意の人の一人に渡邊貞之助氏という人物が居て、
(呆れ返ると言うほどではないにしても)、矢張り大學の彼の研究室の年間講座研究費を上回る金額の、研究費の提供を申し出られた。


 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

この渡邊氏がY君を大學に訪問して、初対面の挨拶の時に、自己紹介して、
「私は京都大学の在学中に学生自治会の会長をしていたが、京都事件が起きて滝川教授が追放されたので退学しました」、
と言ったと、Y君は記憶している。


何しろ随分と昔の話であり、記憶も正確さを欠くかもしれないが、大筋に於いては間違いない。
処で、若しもY君が、「わが青春に悔なし」を見ていれば
直ちに反応して、
「映画で八木原幸枝(原節子の演じた令嬢)の恋人・野毛(藤田進の演じた学生)、のモデルは貴方でしたか」
と聞いたであろう。

いや、野毛は死んだことになっているから、違うか。
或いは、映画化のためのフィクションとして、彼が死んだことにして脚本を作ったが、歴史的事実は違ったのか。
若しも野毛でないとしたら、渡邊氏があの映画の中のどの人物のモデルになっているのか。
或いは、映画製作者は“歴史的事実でなく、筋は創作に基ずくもの”と称しているが、何処までが事実に即している話なのか、
などの話を聞くことが出来た筈である。

昭和20年代の代表的な話題作映画であるから、見ていないことの方が珍しいくらいであり、渡邊氏も、Y君がその様に反応する事を期待して、話題の展開を考えていたかも知れない。


しかし、Y君は、「わが青春に悔なし」、が大ヒットした映画であることや、原節子が主演していた事は知っていたが、
京大事件が舞台だということを、昨日(平成20年)まで知らなかった
。 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★

Y君は、野間口氏の来訪を受けていながら、その稀有なチャンスを活かせなかったように、渡邊氏の来訪を活かすことが出来なかった。 
或いは、「わが青春に悔なし」の重要な部分を、聞かせてもらうことが出来たかも知れなかったのに。

のみならず、『その様な勿体無いミス』を犯したことを、昨日まで知らなかった、のであった。


一期一会というが、人の出会いを活かすことは、難しいものである。

昨夜、寝巻きに着替えながら、このことを悟ったY君は、何時もならば就眠する時間を、そのまま映画を最後まで見て、その後から私に電話で己のドジ振りを報告して来たのであった。

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
丁度この日は靜岡で句会と会食があって遅く帰ってきたが、この映画が放映されるのを知っていたら疲れていても見たと思う。それこそ青春時代に見た物で影響力の強かったものは再度見たいのは当然のこと。
それにつけても原節子を始め高峰三枝子、水戸光子等等昔の女優は美しかった。美しいと言うのは白痴美の事ではなく、容貌も言葉も所作もすべて美しかった。マスコミも彼女等の私生活を暴くような事をしなかっただけに、彼女等の美しさに神秘性が加わったものだ。それが今は暴露記事が横行すると共に、女優も前記の意味で美しくなくなった。
大分本論から外れたコメントになってしまったが、記憶に残る中でも特に印象の強い映画でした。
Alps
2008/05/14 11:45
Alps様
コメントを有難う御座いました。
折角の映画を見損ねたのは残念でしたね。
”昔の女優は・・・”、”当時のマスコミは・・・”、”今では女優も・・・”、すべて、おっしゃるとおりだと、共感します。
その中でも、若かりし日の原節子を見損なったのは残念でしたね
変人キャズ
2008/05/14 16:01
、「わが青春に悔なし」、の東大図書館前でのロケと戦後の八木原教授の復帰講義の場面にエキストラで当時2年生で本郷の教室に居住していた小生も出演しています。信州人で松本高校出身なら私の元の同僚だった矢澤一彦氏がご存じだとおもいます。
NN生
2009/05/05 14:13
インターネットをやるのは若者であって、老人でブログなどを持っている、キャズ様のグループの方々、Alps様、モナミ様、晩秋様などは極端な例外だと思っていたら、NN様のような方もいらしたのですね。
原節子だとか、旧制高校だとか、そんな言葉の通じる人達でインターネットをやる人が居るのは嬉しいです。 なお、キャズ様はご存知の通り、私だって、日本が米国と戦争したことがある、くらいの事は知っています。
Mariko
2009/05/06 03:04
NN生様、
大連休の大渋滞から大奮闘して帰宅して、NN生様のコメントを拝見しました。
大変に貴重な体験をされたそうで、是非、あの歴史的名画のロケ風景をブログにお書きになって、公開して下さい。
変人キャズ
2009/05/07 04:01

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