「官僚の弊害」を許したのは誰

6/7の毎日新聞「特集ワイド」は
  “外国人記者の見た原発事故“  という視点で、
       ニッポンの不思議、を語っている。
  この欄については、4/18の記事の論旨が無茶苦茶
  であることを、 ▲「科学技術過信の果て」ではない
      :[C-250]、に批判した。
今回も同様に、よくもこんな思い付き程度の作文を
     公器である紙面に出すものと、呆れた。
  今回の記事は、井田純の署名入りである。

3.11の事故発生以後に、原子力安全・保安院、首相官邸
  各省庁、東電などが公表した情報が、不正確だったり、
  秘匿が有ったり、あまりに酷い状況で内外の信頼が
  全く無くなってしまったので、 4/25以降にはこれら
  全機関が集まって、共同で情報公開することになった。
  その外国人記者向けの、6/1の会見の様子、を
  伝えた記事である。


      ★ ★ ★ ★ ★

この日も、定刻寸前になっても記者席は無人だったが、
       始まると何人かは来たから、一時言われた
    「誰も居ない記者席に向かっての発表」ではなかった。

そのように会見が不人気な理由は、 ①最近、他の
   アジア地域に重点を置き、東京の取材拠点を閉鎖
   する海外メデイアが相次ぎ、特派員数が減ったこと、
   日本人記者を抱える社が増えたこと、
   肝心なことは決して話さない保安院、東電の会見に
    出ても無意味だから、  のためだという。
  この意見は、井田記者が米国人記者に聞いたもので、
    正しいと思う。

しかし、その他に、ドイツ人、デンマーク人記者
     の意見を紹介している部分、があるのだが、
  そこに、井田記者の不見識が覆いかぶさって、
  この新聞記事の文章に、なっているような気がする。

地震の多い、技術先進国の日本で、災害対応プラン
    が存在しなかったのが、 驚きだったこと、
  四川大地震の時の中国の対応は効率的で、
    日本のように一つの決定に30の会議を
    要する国とは、 大きな差があった、との
    デンマーク人記者の意見も、真っ当だと思う。
  従って、その記者が4/4付けユランズ・ポステン紙
      (デンマーク最大の発行部数の高級紙)に
  「問われているのは、日本の政治構造そのもの
   であり、政と官と原子力産業の、密接すぎる
   関係が、 惨事にいたるシステム、を準備した」、
      と書いているのも、 全く正しい。

  「菅首相に批判の矛先が向いているが、全てを
   彼のせいにするのは不公正だ」、という文章も、
   デンマークの新聞にこれが載るのは、結構だ。
  日本の国内に多くの原子炉が造られ、現状を
  齎したのは、管首相の責任ではない、のだから。

しかし、「全てを彼のせい」、という辺りの文章を、
  そのまま、この「特集ワイド」に、結論的に
         引用するのは、問題である。
  言葉というものは難しくて、文字で書けば
  同じになる文章も、発音や話者の表情によって、
  全く逆の意味で、伝わることがある。
  文章も、同一の一行を、 引用する仕方で、
  伝達される内容が、大差を持つ場合がある。


      ★ ★ ★ ★ ★

面白いことに、この記事の載った前日の同紙・「余録」に、
  正にこの辺の注意が、述べられている。

  被災地などの聴覚障害者に対するサービスのために
  3/13日に官房長官会見に手話通訳が登場した話である。
  これが好評かと思ったら、意外なことにそうでもない、
  という話である。 アンケート調査によると、これが
  「全く理解できなかった」、「少しだけ理解出来た」、
  が7割に上った。
  その理由は、通訳者が、官房長官から離れて立って
      いるので、テレビ画面では小さくしか映らなくて、
      表情が良く見えないため、 だという。
  手話では、表情が文法と深い関係が有り、手の動きを
    見ているだけでは、意味が伝わらないのだそうだ。

  話し言葉でも、表情、声の調子、相手との関係、などが
  重要な役割を果たし、否定にも疑問にもなるので
  本当の意味を伝えるためには、注意が必要だ、
  という話である。

このコラムに述べられている教訓、を学びとらなかった
  井田記者が、文字で書けば同じになる、外人の文章を、
  無造作に「特集ワイド」の文中に埋め込んだのが、見える。


      ★ ★ ★ ★ ★

前回の中沢雄大記者の書いた記事の場合と同様で、
  今回の「特集ワイド」の書き方は、記者の
  頭脳構造の疎漏さを、丸出しにしている。
現在の日本国内で、管首相を非難しているのは
  国のエネルギー政策を論じているのではなく
  此処3カ月ほどの被災者への対処に、
    「心」がないこと、を怒っているのだ。

報道の中でも、テレビ、新聞がキチンと機能しなくて、
  政官の目付役として作用しないこと、を何度も述べた。
  原発事故の責任と言う点でも、
    権力を持つのは政官界、であっても、
    嘗て原発反対の意見がそれなりに有った時に
    報道が十分に機能しなかった、という意味では
 、新聞だって、今回の事故に幾ばくかの責任が有る。

政官の弊害を引き起こしたのは、お目付け役の
     「報道」、が機能しなかったから、だ。
  新聞人がそれに就いて反省したり、謝罪
     したり、ということは、全くしていない。

今回の事故対策の不十分さについても、
     新聞、テレビは、実に鈍感であった
  週刊誌や、ここ数日ではテレビもかなり、
  それらしい報道をするようになっているが、
  相変わらず、この井田記者のような人物が、
  こんな大きなスペースで、頓珍漢な事を
  書いているのは、困ったことである。

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