女は畏怖すべき存在

以前に、女は恐ろしい話:[C-164][2007/12/27]
を書いたので、今回は“女は畏怖すべき存在である”話を書く。

Y君の叔母、Tさんが数え年103歳の高齢で亡くなった話が
  エルマンのバイオリン演奏会
にある。
その為にY君は、彼の郷里のTさんの家に行くことになった。

この正月に亡くなった叔母の葬儀では、告別式と、49日の納骨と、二度に亘って本当に久し振りに田舎に行って、懐かしい人々と再会して、昔の事をいろいろと思い出したようだ。

Y君の母は長女で、母の長男としてY君が生まれた後も、かなり長期間にわたり母の4人の妹達が独身だったので、この叔母たちはY君にとっては叔母というよりは、姉のような存在だった。
Y君の母を含めて、その姉妹たちも、先日亡くなった叔母を最後に全員が亡くなったので、次は弟分である自分の番だ、と感じ、いろいろなことを考える内に、Y君は自分の生きてきた日々を思い出すという。

************************************

Y君は叔母の葬儀のときに、昭和20年以来会っていなかった縁戚の姉妹二人の女性Aさん、Bさんと出会い、昔話をしてあまりに懐かしかったので、
叔母の納骨のために再度田舎に行った時には、前夜に地元の温泉宿で彼女らと再会し、ゆっくりと時間をとって、深夜まで長話を愉しんで旧交を温めた。

とは言っても、半世紀の昔、戦争中の社会では、彼女らとはY君は年齢が近いので、行き会っても雑談・会話をするなどのことは、有り得ないことだった。
当時は彼女らの家に行って、お茶を出して貰っても、「こんにちは」以上の言葉をAさん、Bさんと交わすことは無かったのだ。
が、お互いに顔かたちは昔から良く知っているのだし、当時の地域での出来ごとは共通の想い出として記憶しているので、今回会った夜は、一晩中昔話に夢中になったのだった。

A、B、姉妹の兄で、Y君よりは少し年長だが、男同士で親しく、Y君にとっても本当の兄のような感じの人物がいたのだが、昭和21年に亡くなっている。 その遺児、(つまり、彼女らの甥)、であるS氏とY君は今回が初めて会った。
S氏は面立ちが父親とそっくりなので、Y君は叔母の葬儀の席で会った時に、初対面のような気がしなかった。

S氏も自身の記憶に全く無い父親の話を聴きたくて、その夜同席していたので、
今までに互いに会話をしたことの無い4人が、深夜までお喋りに打ち興じたのだった。

************************************

Y君の田舎は寒村で、昔の中等教育を受けることは稀な地域だったから、彼女らも小学校しか出ていない。
そして、S氏は物心付く前に父親を失っているので経済的には大層苦労し、高等教育は受けていない。
然し、彼は自動車の整備技能競技では全国2位の高成績を挙げ、現在は地元の販売会社の責任者になっている。

詳細は省略するが実は、A、B、姉妹の両親は、田舎では稀に見る実績のある、伝説的に傑出した人達であったので、さすが遺伝とは凄いものだと、Y君は感心したという。

彼女らも現在は、それぞれに地元で若い人達の指導的な仕事に活躍しているだけでなく、会話をしてみて、その見識の高さとか、人柄の素晴らしさに感動したそうだ。

Y君自身は職歴の関係で、学歴とか社会的地位の高い人物でも、全くクダラない人間が非常に多いのを見てきている。

それに較べて、あの少年時代を同じ田舎で過ごした、小学校しか出ていないこの女性たちの人物の大きさ、教養の素晴らしさに感動し、
内心は彼女らに対して恥ずかしい思いを感じながら、その夜を楽しんだのだった。


人間の一生なんて短いといえば短いけれども、農村のあの姉妹がこれだけ成長するなんて、結構長い時間なのだなあ、と感動したという。

************************************

戦前ならば、田舎でも若者は年長者に仕込まれたり、その種の公認施設(遊郭)もあって、男女関係などの知識があったし、また逆に戦後社会では当時のカストリ雑誌等で知識を得て、若者も性知識を持っていた。
丁度、Y君の年代の者だけは、肉体的には一人前になる段階で、その種の社会教育がなかった。
それで昔、Aさん、Bさんらと会っていた頃はY君は未熟で、男女の事などは全く知らなかったし、
今回は温泉宿で深夜まで過ごしても、相互に80代の老人同士で、
その種の話は皆無であり、最初から念頭に無いのも、面白い。

************************************

叔母の死後に、Y君は寝ている間などにふと、自分の人生の、今まで忘れていた何かの出来事を思い出していたりするようになった。
その都度、自分は随分幸せな人生を送らせて貰ったなあ、と感じるという。

貧乏暮らしでお金に縁は無かったし、社会的な地位、権力にありつくこともなかったが、その代わり、普通では考えられないほどの僥倖で、「人との出会い」に恵まれた。
神様は何故、私にはこれ程によく待遇してくださるのだろうか、と訝しく思うほど、確率的には稀な「人との出会い」の僥倖を頂いたのを有り難く思う、という。

でも、現役生活を引退しての後は、内外の著名人との華々しい出来事は無かった。
それが、今回、幼馴染のAさん、Bさんとの再会で、この様な思いをするとは考えもしなかった、という。

この記事へのコメント

モナミ
2009年04月25日 12:21
キャズ様
トラックバック有難う御座いました。
「女は畏怖すべき存在」については二度繰り返し読ませて頂きましてコメント入れさせて頂きたいなと思いながら躊躇しておりました。

Y様のご親類のお二人の女性をイメージしております。
学歴は浅くても知識、教養の有る方、そして自然と人格も備わるのですね。
私もかつてこの様な友人を持った事が有ります。

ふとした事で知り合った女性ですが「私は高等小学校しか出ていないので知らない事は教えてね」と彼女は言ってましたが八年間でよく勉強していた事と向学心の強さに驚いた事がありました。私達の好い交際は暫く続きましたが空爆により市内は破壊されその後音信不通になりましたが彼女もA様B様の様な素晴らしい女性に成っておられるだろうと久し振りに旧友に思いを馳せました。

繰り返し読ませて頂いたのはキャズ様とY様の関係について私なりに想像してみたのです。

コメントとしては長くなり過ぎ失礼致しました。
変人キャズ
2009年04月25日 21:09
TBをお送りするのは、かなり躊躇っていたのですが、私共仲間の年代の生活感情は同世代の者でないと、とても理解されないが、同世代の連中の殆どはインターネットをやらないので、御分かり頂ける人物として、モナミ様をお邪魔しました。
矢張り、よく御理解頂けたようで、嬉しく思いました。
A,B姉妹との再会は、亡くなった叔母から頂いた最後のプレゼントだ、とY君は言っていますが、我々よりも一回り若い人達には、その様な気持ちは理解が難しいでしょうね。

この記事へのトラックバック

  • 人生の確率計算

    Excerpt: 先日例の仲間の会合で“Y君の所感”と“ピアニスト君の確率計算”を巡って話題が湧いた。   ①▲女は畏怖すべき存在:[C-178]、に紹介している“Y君の所感”: 『叔母の死後に、Y君はふと、自分は.. Weblog: 変人キャズ racked: 2009-04-28 20:30