責任者の謝罪とは?

今月上旬に、「年金記録漏れ問題検証委員会」が、最終報告書を纏めた。

総務省のこの委員会(座長・松尾邦弘前検事総長)の報告書では、歴代社会保険庁長官の責任が最も重く、歴代厚相、厚生労働相も責任がある、と書いている。

ところが、例に依って「責任の所在を役職名で」捉えるだけで、「個人の責任」までは言及していない。


半世紀前に輝かしい希望を抱いて出発した「戦後日本社会」が、
  現状のような情けない体たらくまで腐敗した原因は、
  「このやり方」にある

と我々の仲間は考えており、夫々のブログで何度か書いている。

端的に云って、昔は「責任を取る」ということは、
   「その人が切腹する」ことであった。
   それが無くなったことが諸悪の根本だ

という理解である。


現在では、何か問題が起こった場合は、
民間企業ならばトップの数人が机の前に並んで平身低頭するし、
官庁ならば問題の発覚した時点(生じた時点ではないの組織責任者が“遺憾である“と談話を表明して、 終わりになる。

今度の場合は、「初めてこの問題を解明する姿勢」を見せた舛添大臣一人が給与の一部を返納しただけで、
  前任者大臣達は何一つ具体的行動を(言葉のお詫びすら)していない。

本当は寧ろ逆で、舛添氏には特別手当を支給し、前任の大臣達から夫々の在任中給与の返済を求めるべきであろう。
繰返すが、1945以前ならば、切腹である。

 ★ ★ ★ ★ ★

昨年 [2006/04/22]に、私は「▲若林亜紀氏の記事」 、を書いた。
   ・ ・ ・ その記事の概略を紹介する ・ ・ ・:

『週刊新潮:2006/4/27号に、若林亜紀氏の書いた文科省批判の記事が載った。

 これを読んで嬉しく思う理由が、二つ有る。
一つは、・・・(中略)・・・。 若しも、官僚が本当に有意義な仕事をするのならば、民間の給与の10倍の所得を与えても良いし、公務員住宅が家賃無料でも良い、とまで私は思う。 実態は逆である。
 それどころか、多くの局面で社会に害悪を流している。
 この事の方が、予算の無駄遣いよりも、問題は大きい
、と私は思う。
 それで、以前に「給料も、年金もそのままで良いから、仕事をしないで居てくれれば」なんて事を書いたこともある。 私見では、{以下、中略}

若林氏の週刊新潮記事を見て嬉しく思った第二の理由は、
  役人の名前を実名で挙げている事

従来、兎角メデイアは行政官庁の行為を報道する時に、担当部局の名前で報じていた。
 「○○局××課」がこの様な決定をした、と書く。
然し、時間の経過の内に、その決定が誤りであったことが明らかになっても、その時には実務担当者が変わっている。


その時点でその部局を担当している人間は、口頭で謝っても、
  「それをやったのは、俺ではない」という顔付きで、
  口先だけ「申訳なかった」、と言葉を述べる。

「○○局××課」という生き物がいる訳でないから、その時点の人間が、深刻に事態を反省するということは全く無い。
運の悪い時に、この部署に来た、という顔がありありと見える態度で、当人は痛くもかゆくもない。
 何時も気軽にミスを繰返す原因は、この無責任さに有る


ところが、今回の若林氏の記事では、誰の責任で、どのようなことになったのか、と書いてある。
これは素晴らしい事、殆ど、画期的と言ってよいことだと思う。
こういう問題は、具体的な人名が表面に出ることにより、世間からの追求が行なわれて、是正されるようになる。{以下、中略}。

付記:佐久間先輩の書いている: ブログ開設一年を振返り、{4}NHK問題:(2) :に紹介されている、週間ポスト 05/3/11 号の、「NHKによる青田買いの話」、のライターも若林さんであった。』

   ・ ・ ・ 以上、「若林亜紀氏の記事」概略の紹介 ・ ・ ・

 ★ ★ ★ ★ ★

同様な記述スタイルは、昨年06/4/6号の週間新潮に桜井よし子氏が書いている、「薬害エイズから学ばない日本」、にもある。

 この記事の書かれた時点で、亡くなった薬害エイズ患者は586名もいた。
 そして、薬害エイズ事件の歴史的和解から10年以上も経っていた。
 生存している被害患者も、和解によって問題解決するものでなく、夫々の人生は、取り返しの付かない事態になっていた。
それにも拘らず、薬害エイズのあとも、ソリブジン、イレッサ、など薬害が、続いて発生していた。

こうなる原因に付いて、桜井氏は、『匿名の壁』、を指摘している。
『行政上の過ちに関して、官僚は誰も責任をとらない。 どんなにひどい政策を立案しても官僚の名前が明かされるわけでもない。
全てが匿名のなかで官僚たちは守られてきた。・・・(中略)
   ・・・匿名社会とは、誰も責任を取らない社会を意味する」


 ★ ★ ★ ★ ★

幕末から明治に掛けて来日した多くの欧米人たちは日本人の立派さに驚き、その文化・伝統を絶賛した。
それが、昭和になり、特に1945の敗戦以後に、このようにヒドイ国に成り下がったのは、「名を重んじる」文化が消滅した事による


「年金記録漏れ問題検証委員会」の最終報告書が、このままで収まり、歴代社会保険庁長官、歴代厚相、厚生労働相の「個人の責任」の追及まで行かずに終わるようならば、日本という国は、ローマと同じで、繁栄から滅亡に向けて転落する以外になくなるだろう。

この記事へのコメント

晩秋
2007年11月12日 15:31
「名を重んじる文化の消滅」を惜しむ、戦前派の感性が今後の日本社会に伝えられるかどうかは分りませんが、もしも、それが出来るとすると、所謂段階の世代では駄目で、最近10年程の就職難に直面した20歳代の世代に希望が持てると思います。
現在の中高年に働きかけるのは無駄であり、寧ろ、孫の世代に向けて語り掛けるのが有効だと思います。

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