(独り言44)トラと評論家

トラと評論家                   79.9.29

★ 8月いっぱい、千葉県鹿野山を舞台に繰り広げられた神野寺のトラ騒動は、たいそう面白かった。
誤解のないように念のため断っておくが、地元住民の不安やゴルフ場が営業できないのが、面白いのではない。地元の人にとっては、実に災難でお気の毒としか云いようがない。

 面白いと云ったのは、事件の経過よりも、それについての人々の考え方が多様である点である。
構成の貧弱な小説を読むよりも、はるかに頭の刺激になった。


★ 今回の事件は多くの教訓を含むように思える。
たとえば機械装置やシステムの設計についての基本的な教訓を引き出して、メーカーでは新入社員の教育素材に利用することもできよう。
また、外部の雑音に振り回されて、警察の方針がトラ射殺→捕獲→射殺、と三転したのは、イソップ物語の「町にロバを連れてゆく父子の話」と全く同じで、まさに教訓的だ。

私にとって最も痛快だったのは、世の偽善的評論家や一部ジャーナリズムが、みごとメンツを潰したことである。
AとBの主張が衝突して問題化すると、「Aも悪いがBも意固地である。 (そして言外に自分は公平で正義そのものだ)」とノタマウのが、利口ヅラした評論家先生の常である。


★ しかし、多くの現実問題では、どちらかに態度を決めねばならない。
公害・原発・国鉄・郵政労使問題、いずれもしかりである。

普通はこれらの問題では、客観的評価の定まるまでの時間が長いので、結論の出る時点では、嘗て評論家が何を言ったかは、皆忘れてしまっている。

★ たとえば、学園紛争の時、同じ一人の若者に対して張るレッテルを、「純真な学生」→ 「学生」→「反代々木系」→「極左派」→「暴力学生」→「過激派」、と変えていってボロを出さなかった。
昭和43年には、「ゲバ棒で殺人をしても、純真な学生」が、2年後には「自動車に放火した程度で過激派」になった


 トラの一匹を射殺した段階で彼らは云った。 「何も殺さなくてもいいではないか」と。
しかし今回の事件に限って、状況の急迫が彼らに変身の余裕を与えなかった。
「静かにしていればオリに戻る」はずのトラは結局野生化した。
お利口な評論家が如何に見当外れであるかは、誰の目にも明らかになった
 トラ程度の問題だからよかった。
エネルギーのような人類の存亡にかかわる問題で無責任な言論が行われることは本当に恐ろしい。




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註記:「私の独り言{前置き[1]}:2005/4/21」に述べた理由で、このシリーズの記事を多数並べているが、これらの中で筆者として最もお読み戴きたいのは、次の2編です。
◎[11]私の独り言{明治生まれ:1979/5/26}[2005/7/6]
◎[9]私の独り言{血税の使い方:1978/4/5}:[2005/07/04]
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