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zoom RSS 信州大学の快挙(2)

<<   作成日時 : 2013/07/15 18:36   >>

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旧制高校の組織や教育理念を知っている人は、極めて少ない現代。
  まして、今春の信州大学入学式で謳われた「春寂寥」、が
  どのような寮歌であり、 また何故それが選ばれたか
   が分かる人は、殆ど居ないであろう。

   「春寂寥」は大正9年の旧制松本高校・思誠寮の寮歌で、
      その歌詞は、晩秋氏の上記記事と、それに続く
        ▲旧制高校の寮歌(2):[L-113]、
   に紹介されている。

しかし、現代人に理解して頂くためには、
   歌詞の内容以前に、寮歌とは何か。
   どのように謳われたものか、の説明が重要
である。

   現代風のシンガーソングとか、芸能お笑い族のダジャレ歌
   ほどでなくとも、  歌謡曲とかクラシック歌曲に並べて
   理解される向きが多いのではないか、と私は心配である。

      ★ ★ ★ ★ ★
信州大学長・山沢清人氏が、

   今の教育システムを考えると、大切なのは「全人教育」であり、
   根本的に人間教育をどうしていくか、信州大学独自のスタイルを
   模索していく必要がある、と述べて、
「前身校の旧制松本高校の全人教育の伝統を誇りに」
   教育を行っていく心算だ、と入学式で寮歌を斉唱した。 
しかし、その目的と手法の関係は、往年の寮歌の歌われ方
   を知らない人には、理解が難しいであろう。

   ここで一寸、その解説を付け足すことにする。
   旧制高校の教育の真髄が、その寮生活体験にあることは、
      当時は良く知られていたことだったし、
      寮歌の意味も其処にあるものだった。


私の古いブログ記事:
      ▲旧制高校・晩秋ブログ挽歌:[C-155]
   に、寮生活、寮歌の歌い方、が書かれている。
     (そして其処には記述が無いが、時にストームの襲来や
        布団蒸しでの寮歌連唱など、それらを知らなければ
        寮歌の意味が分からない状況の幾つかもある)
      が、長文で、まとまりが悪くて、読み難い。 
      キチンと整理した記事にしておかなかったのが、
           今となっては悔やまれる。
       仕方ないので、 此処には部分的に引用して

   その内容紹介をしておく。

序論に続いて
   ************戦前派の教養について*************
   の節がある。 
そこに述べられているのは、
  旧制高校の生徒にとっての、最も重要な教育は
   :「友人同士の駄弁り」、
、    であることだ。
多くは田舎の旧制中学から出てきた若者が、全寮制の宿舎
   に入り、今迄全く知らなかった世界での生活を始める。
同室の数名、同寮の数十名、の者達と毎日、毎晩、
   口角泡を飛ばしての、所謂「駄弁り」の生活をし、
   その中で、教室以外での強烈な知的吸収を体験し、
   広い日本にはこんな凄い奴が居るのか、と驚く。
          (中略)
   憧れていた高校生になり学生寮に入ってみると、
      自分は、同室8人の中でも、同寮の60人の中でも、
      一番駄目な男で、誰よりも本を読んでいないし、
      議論を戦わしても叶わない。
      挙句は、議論中に、「下らない」、などと、
           面罵されることも、毎度である。
   悔しいが、考えて見ると、理屈は相手の方が通っている・・・。


この寮生活の初期体験が、貴重な成長への切っ掛けとなる。
   寮歌、の歌詞もだが、 大切なのは、その歌われ方と、
   教育的効果である。
同寮数十人の者が一室に集まっての一晩中の
   白熱の議論の後で、全員で寮歌を斉唱する。
その時に、その夜の議論で熱した頭脳が冷え、
   やっつけられた事の心の痛みが流失して行き、
   その夜に得たものが身体の中に浸透し植え付け
   られていく、

其処が大切なのである。

「旧制高校・真のエリートの作り方」(産経出版)、pp.41-44、参照)

   今日の言葉で言う“ブレーンストーミング”が、教育に
      如何に有効な手段であるかが、納得出来る。
   その手法の中で、寮歌の持つ意義が大きかったのである。

   信州大学では専門分野に分かれる前の一年間を、
      俗に言う「基礎教育」ではなく、もっと学びの原点
   にある普遍的な視点、複眼的な学問を経験
      させるべく、山沢氏が考えていること。
正にその教育が旧制高校の寮生活に有った、のだった。

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変人キャズ
2013/08/08 18:39
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変人キャズ
2013/08/08 22:31
安倍内閣への絶望
8/10の報道で、安倍総理が夏季休暇を取ると報じるのを聴いて   私は呆れた。  その二日ほど前にテレビで、沖縄戦の時の   島田知事の番組を見た感動が未だ抜けていないためもある。 。 若い世代はご存じないかもしれないが、島田叡・沖縄県知事   については、「旧制高校」(産経新聞出版、2013年、pp.154〜159}、   「旧制高校物語」(秦郁彦著、2003年、文春新書、pp.185〜192)   を参照されたい。 島田知事程でなくても、昭和20年の敗戦決定の時には、 ... ...続きを見る
佐久間象川
2013/08/12 03:42

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
どのように歌われたかについては、”かつて、日本に旧制高等学校があった”(手束仁著)の説明が非常jに分かり易く書いてあると思いました。 この著者の父君への思いが著者の理解を深めたのだと思いながら読みました。
Mariko
2013/07/31 02:57

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